【第63回 気象予報士試験 実技1】問3を徹底解説|エマグラム・LCL・LFC・鉛直シアー・マルチセル
こんにちは!今回は第63回 気象予報士試験 実技1 問3を解説します!
今回の問3は、
- エマグラムの読み取り
- LCL(持ち上げ凝結高度)
- LFC(自由対流高度)
- EL(平衡高度)
- 相対湿度
- 鉛直シアー
- マルチセル型積乱雲
- 蒸発冷却による下降流強化
など、熱力学と積乱雲の基礎が詰まった重要問題です。
実技試験では、
- エマグラムを「なんとなく」読む
- LCLとLFCが混同する
- 蒸発冷却の意味が曖昧
という受験生が非常に多いので、丁寧に整理していきましょう。
実技試験記述5型
基本セット:どこで(場所・高さ・時刻)+ なぜ(原因・背景場)+ 何が起きている(現象)
- 分布型:「A側では○○、B側では△△」
- 時間変化型:「◯時にはA、△時にはBへ変化」
- メカニズム型:「〜ため□□が強まり、その結果△△」
- リスク型:「〜のおそれがあり注意が必要」
- 構造型:「◯◯hPa付近が前線面に対応」
記述式問題の考え方はこちらの記事も参考にしてください!
⇒ 【実技試験講義No.1】気象予報士試験実技試験記述5型
■ 問3(1) エマグラムからLCL・LFC・雲頂高度を読む
模範解答
① 雲底高度:960hPa
使用した線:乾燥断熱線・等飽和混合比線
② 自由対流高度:870hPa
浮力がなくなる高度:450hPa
雲頂の気温:-24℃
◇ 解説
① 持ち上げ凝結高度(LCL)
LCL(持ち上げ凝結高度)は、
空気塊が初めて飽和して雲ができ始める高さ
です。
エマグラムでは、
- 気温 → 乾燥断熱線
- 露点温度 → 等飽和混合比線
を上へたどり、
交わる場所
を探します。
今回、館野の1000hPa付近では、
- 気温:約24℃
- 露点:約9℃
です。
これをエマグラム上で追跡すると、
960hPa
付近で交差します。
したがって、雲底高度(LCL)は960hPaです。
この図で確認するポイント
- 気温は乾燥断熱線に沿って上昇させる
- 露点は等飽和混合比線をたどる
- 交点=LCL
超重要!つまずきポイント
LCLとLFCを混同する受験生が非常に多いです。
- LCL:雲ができ始める高さ
- LFC:浮力だけで上昇できる高さ
です。
② 自由対流高度(LFC)と平衡高度(EL)
LCLを超えた空気塊は、湿潤断熱線に沿って上昇します。
このとき、
空気塊温度 > 周囲気温
になると、空気塊は自力で上昇できます。
これが自由対流高度(LFC)です。
今回のエマグラムでは、
870hPa
付近がLFCです。
さらに上昇すると、最終的に周囲気温と一致します。
ここが、
平衡高度(EL)
です。
今回は約450hPa付近となっています。
この高度を雲頂高度と考えると、
雲頂気温 ≒ -24℃
となります。
LCL・LFC・ELの流れ
- LCL:雲ができ始める
- LFC:浮力だけで上昇開始
- EL:浮力がゼロになる
■ 問3(2) 最も乾燥している高度と相対湿度
模範解答
高度:910hPa
相対湿度:50%
◇ 解説
エマグラムでは、
気温と露点温度の差
が大きいほど乾燥しています。
館野では、
- 下層:比較的湿潤
- 910hPa付近:急激に乾燥
しています。
そのため、最も乾燥している高度は910hPa付近です。
相対湿度の計算
問題では混合比から相対湿度を求めます。
飽和混合比が10.5、実際の混合比が5.5なので、
5.5 ÷ 10.5 ≒ 0.52
です。
これを百分率にすると、
52%
となります。
解答は10%刻みなので、
50%
です。
つまずきポイント
相対湿度は、
実際の水蒸気量 ÷ 飽和水蒸気量
です。
「湿度=露点差」だけで終わらず、 比の概念を押さえておきましょう。
■ 問3(3) 鉛直シアー・マルチセル・蒸発冷却
模範解答
① 鉛直シアー
② マルチセル
③ 蒸発
④ 昇華
⑤ 冷却
◇ 解説
① 鉛直シアー
館野の高層風を見ると、
- 下層:南南西風
- 上層:西南西風
となっています。
つまり高度によって、
- 風向
- 風速
が変化しています。
これを、
鉛直シアー
と呼びます。
鉛直シアーとは?
高度による風向・風速変化。
積乱雲の組織化に重要。
② マルチセル
鉛直シアーが強い環境では、
- 積乱雲が傾く
- 新しいセルが次々発生
- 積乱雲群が長寿命化
します。
これが、
マルチセル
です。
大雨・雷・突風の原因になります。
ここ重要!
鉛直シアーが弱いと、
- 単セル
- 短寿命
になりやすいです。
強いシアーがあると、積乱雲は組織化します。
③〜⑤ 蒸発冷却と下降流
下層が乾燥している環境では、
- 雨粒が蒸発
- 氷粒が昇華
します。
このとき、
周囲から熱を奪う
ため、空気が冷やされます。
つまり、
蒸発・昇華 → 冷却
です。
冷却された空気は重くなるため、
強い下降流
が発生します。
これが、
- ダウンバースト
- ガストフロント
- 突風
などにつながります。
記述式解答のポイント:メカニズム型
どこで:乾燥した下層で
なぜ:降水粒子が蒸発・昇華するため
何が起きている:空気が冷却され下降流が強化される
■ 問3 全体まとめ
- LCLは乾燥断熱線と等飽和混合比線の交点
- LFCは自由対流が始まる高度
- ELは浮力がゼロになる高度
- 気温と露点差が大きいほど乾燥
- 910hPa付近で最も乾燥し相対湿度50%
- 高度による風向・風速変化を鉛直シアーという
- 強いシアー環境ではマルチセル型積乱雲が形成される
- 蒸発・昇華は周囲を冷却し下降流を強化する
※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。
以上、第63回 気象予報士試験 実技1 問3の解説でした!
訂正・ご意見などありましたら、ぜひコメントで教えてください!
皆で最高の独学環境を作っていきましょう!
